障害者雇用枠での就職や転職を考える際、多くの方が最も不安に感じるのが「給料・年収」についてではないでしょうか。求人票を見て「障害者雇用は給料が安い」「これでは一人暮らしや今の生活水準を維持できないかもしれない」と悩み、就業をためらってしまう方は決して珍しくありません。
しかし、実際のところはどうなのでしょうか。一概に「障害者雇用だから給料が低い」と諦める必要はありません。働き方やキャリアの選び方次第で、しっかりと収入を確保し、年収アップを実現している方はたくさんいらっしゃいます。
この記事では、厚生労働省の最新データに基づく障害者雇用のリアルな給料事情を徹底解説するとともに、あなたの特性を活かしながら年収を上げるための具体的なロードマップをお伝えします。
障害者雇用の給料平均

障害者雇用の平均賃金と平均年収
まずは、客観的な統計データから障害者雇用の給料の全体像を把握しましょう。厚生労働省が5年ごとに実施している最新の「令和5年度障害者雇用実態調査」によると、障害者雇用を取り巻く環境は着実に進展しています。
しかし、賃金水準については、雇用形態や労働時間によって大きなばらつきがあるのが実情です。パートタイムや時短勤務の方も多く含まれるため、全体の平均値だけを見るとどうしても低く見えてしまう傾向があります。
障害種別ごとの平均賃金・年収の違い
読者の皆様にとって最も気になるのは、「自分と同じ障害を持つ方の平均はどれくらいか」という点でしょう。同調査に基づく、障害種別ごとの1か月の平均賃金および年収は以下の通りです。
| 障害の種類 | 1か月の平均賃金 | 年収(賞与含まない) |
|---|---|---|
| 身体障害者 | 23万5,000円 | 約282万円 |
| 知的障害者 | 13万7,000円 | 約164.4万円 |
| 精神障害者 | 14万9,000円 | 約178.8万円 |
| 発達障害者 | 13万円 | 約156万円 |
このように、障害の種別によって賃金水準に差が見られます。これは、就労機会の多さや職種、労働時間、そして正社員比率の違いなどが複雑に絡み合った結果と言えます。
令和5年度障害者雇用実態調査
年齢別・雇用形態別の年収相場
給料は年齢や雇用形態によっても大きく変動します。例えば、身体障害のある方は年齢層が高く、勤続年数が長い(平均12年2ヶ月)傾向があり、それが平均賃金を押し上げている要因の一つです。一方、知的障害や発達障害のある方は若い年齢層の割合が高く、非正規雇用からキャリアをスタートするケースが多いため、初期の年収相場は低くなりがちです。 正規雇用(正社員)か非正規雇用(契約社員・パート等)かによって、年収には100万円以上の開きが出ることも珍しくありません。
地域別の賃金水準の違い
お住まいの地域によっても、年収相場は変わります。これは各都道府県で定められている「最低賃金」が異なるためです。都市部(東京や大阪など)は基本給が高く設定されやすい反面、生活コストもかかります。一方、地方では給与水準は落ち着きますが、生活費を抑えやすいという特徴があります。近年はテレワークの普及により、地方に住みながら都心部の水準で給料を得る働き方も少しずつ増えてきています。
手取り額の目安と生活水準のイメージ
「額面の年収」と「実際に口座に振り込まれる手取り額」は異なります。一般的に、手取り額は額面の約8割程度になると考えておきましょう。 例えば、月収が15万円の場合、税金や社会保険料が引かれた後の手取りは約12万円前後になります。この金額で一人暮らしをする場合、家賃や光熱費、食費を切り詰める必要があり、経済的な余裕を持ちにくいのが現実です。自分がどのような生活を送りたいか(一人暮らし、趣味への投資、将来の貯金など)から逆算して、目標とする手取り額を設定することが重要です。
一般雇用との年収差の目安
そもそも「一般雇用」とは、障害の有無に関わらず、企業が一般的な求人として募集・採用する枠組みのことです。合理的配慮を前提としないため、業務の範囲や責任が広く、転勤や残業が発生する可能性も高くなります。その分、昇給や昇格のチャンスが豊富に用意されているのが特徴です。
国税庁の「令和4年分 民間給与実態統計調査」によると、日本の給与所得者全体の平均年収は458万円です。先ほどの障害者雇用の平均年収(約156万〜282万円)と比較すると、全体的に見ても障害を持つ方の平均年収は低いことがわかります。この格差の背景には、次で解説する「労働条件や働き方の違い」が大きく関わっています。
令和4年分 民間給与実態統計調査
障害者雇用の給料が低くなる理由

障害者雇用の給料が低くなりやすいのには、構造的な理由があります。決して「障害があるから不当に低くされている」わけではなく、労働条件や働き方の特性が影響しています。
雇用形態
最も大きな理由は、非正規雇用の割合が高いことです。障害者雇用では、本人の体調や業務への適応を見極めるため、まずは契約社員やパートタイムとして採用されるケースが多く見られます。有期雇用の場合、基本給が低く抑えられがちです。
| 障害の種類 | 正社員雇用割合 |
|---|---|
| 身体障害者 | 59.3% |
| 知的障害者 | 20.3% |
| 精神障害者 | 32.7% |
| 発達障害者 | 36.6% |
令和5年度障害者雇用実態調査
業務内容
企業側が働き手の安全や健康に配慮した結果、業務の難易度を下げたり、責任範囲を限定したりすることがあります。補助的な業務や定型業務が中心になると、どうしても高い専門性が求められる職種に比べて賃金水準は上がりにくくなります。
キャリア形成
企業側の理解不足や「過度な配慮」によって、新しい業務への挑戦や責任あるポジションを任されにくくなるケースがあります。その結果、スキルアップの機会を逃し、長期的なキャリア形成が難しくなることが、給料が頭打ちになる一因です。「企業からの配慮」が、時には「キャリアアップの制限」に繋がってしまう仕組みを理解し、自分にとって本当に必要な配慮は何かを見極めることが大切です。
勤務時間
障害の特性や通院の事情から、短時間勤務(週20時間〜30時間未満)を選択する方が多いことも、全体の平均年収を下げる要因です。労働時間が短ければ、それに比例して給料は少なくなります。
企業規模や業界構造による影響
大企業と中小企業、あるいは利益率の高いIT業界とそうでない業界とでは、元々の賃金ベースが全く異なります。どの業界、どの規模の企業を選ぶかによって、障害者雇用であっても到達できる年収の上限は大きく変わります。
給与が低くなる仕組みを正しく理解し、それを回避する戦略(正社員登用実績のある企業を選ぶ、スキルを身につける等)を立てることで、一般枠と遜色ない年収を実現している方はたくさんいらっしゃいます。
障害者雇用で年収を上げるための考え方

目指せる年収ラインの目安
ご自身のスキルと体調に合わせて、段階的に目標を設定しましょう。
- 年収300万円:
フルタイムの契約社員や、事務職の正社員登用で十分に到達可能なラインです。自立した生活の基盤となります。 - 年収400万円:
専門的なスキル(IT、経理、人事など)を持ち、正社員として評価されることで見えてくる水準です。 - 年収500万円以上:
マネジメント経験や、一般枠と同等の高度な専門職(エンジニアなど)で採用された場合、障害者枠であっても到達可能です。
自分の障害特性に合う働き方を選ぶポイント
無理をして高い給料の仕事に就いても、体調を崩して退職してしまっては元も子もありません。自分の障害特性(得意なこと、苦手なこと、ストレスを感じる環境)を正確に把握し、「配慮さえあれば能力を最大限発揮できる仕事」を選ぶことが、結果的に年収アップの近道となります。
そのためには、「頑張りすぎない働き方」をデザインすることが大切です。テレワークやフレックスタイム制を導入している企業を選び、通勤の疲労を減らすことで、フルタイム勤務を継続しやすくなり、安定した収入につながります。
障害者雇用で給料を増やす方法

資格取得を目指す
就労中に業務に直結する資格を取得することは、非常に有効な手段です。企業によっては資格手当が支給されるため、直接的な収入アップが見込めます。- IT系の資格:基本情報技術者試験、AWS認定資格など
- 事務系:簿記2級、TOEIC、MOS、宅地建物取引士(宅建)など
- 専門系:社会保険労務士、行政書士など
正社員登用制度を利用する
非正規雇用から正社員へステップアップすることは、最も確実に年収を上げる方法です。求人を探す段階で、「過去に正社員登用の実績があるか」「登用のための明確な基準があるか」を必ず確認しましょう。正社員になることで、基本給のベースアップだけでなく、賞与(ボーナス)の支給、退職金の積み立て、各種手当(住宅手当や家族手当)の適用など、生涯年収で考えると数千万円単位の違いが生まれることもあります。
なお、正社員登用には、日頃の業務態度に加え、面接や筆記試験が課されることもあります。「自分がいかに企業に貢献できるか」「体調管理を自立して行えているか」を論理的に伝えられるよう準備しましょう。
高収入が見込める業界の傾向
IT・通信業界、金融業界、大手メーカーなどは、元々の給与水準が高く、障害者雇用であっても好条件の求人が出やすい傾向があります。
一方で、過去に一般枠などで培った経験やスキルがある場合、それを活かせる同業界・同職種への転職も視野に入れるとよいでしょう。「即戦力」として評価されれば、前職の給与水準を維持、あるいはアップさせた状態で転職できる可能性が高まります。
大企業・好条件求人を狙うときのポイント
大企業は福利厚生が充実しており、年収アップに有利です。しかし、応募者も多いため競争率は高くなります。企業が求める人物像を深く理解し、「配慮事項」だけでなく「提供できる価値」を職務経歴書でしっかりとアピールすることが重要です。
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大学卒業後、日系コンサルティングファームに入社。その後(株)D&Iに転職して以来約10年間、障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザーを歴任し、 障害・年齢を問わず約3000名の就職支援を担当。







